第16章 The beginning of the story6
雨が降ってきた。
スコールだ。
ざあっと窓の外が一気に騒がしくなる。
「…そんな、事があったんだね…」
智の呟きで、沈黙が破られた。
「ごめん…話せなくて…」
「いいや…こんなこと、気軽に話せないだろ…」
翔がそっと俺の肩に手を置いた。
「…辛かったな…潤…」
「いいや…辛かったのは嫁であって、娘であって…俺は…」
後を追うことができなかった、ただの間抜け野郎だ。
「何言ってんだよっ…なに…」
智が手で顔を覆ってしまった。
「智…」
雅紀が智の肩に腕を回して抱き寄せた。
「辛かったに決まってるだろっ…潤っ…」
「うん…」
「ばかっ…俺達の前で強がんなっ…」
「うん…ありがと…」
一気に肩の力が抜けて、背もたれに身体を預けた。
「翔…」
「ん…?」
「だから…最初、あんな態度取って…ごめん…」
「いいや…なんとなく、わかってたから…」
「え?」
「きっと、潤の大事にしてた人に似てるんだろうなって…」
微笑むと悲しそうに顔を伏せた。
「…苦しませたかな…」
「違う…そうじゃないんだ…」
なんでこの話をしたのか…
俺の中で区切りをつけてしまいたかったのもある。
でも、そんなことが理由じゃない。