第16章 The beginning of the story6
「翔に…家族、作ってあげたいな…」
「え?」
聞こえなかったのか、雅紀は俺の顔を見た。
「潤がお父さんで、雅紀がお母さんになればいい」
「え?え?」
ぼすっと雅紀の腰に抱きついた。
「智?どうしたの?」
「ううん…翔と、もっと仲良くしようね?雅紀…」
「ん?ふふ…そうだね。もっと、翔と仲良くしたいね」
「…なんか雅紀が言うとやらしい…」
「なんでえ!?」
ぶぶうって笑いがこみ上げてきた。
「なんでだよお…」
「べっつにぃ~!」
ゲラゲラ笑いながら雅紀の背中に凭れかかった。
「…きっと、翔は俺達のこと家族みたいに思ってるんじゃないかな…」
「え?」
「じゃなきゃさ…こんな危険なとこ、忍び込む理由がさ…」
「シュウが居るからじゃないの?」
「もちろん、そうだけど…でも、翔は俺達のこと、凄く守ってくれようとしてる」
「うん…」
地下にシェルターを作ろうって考えてくれたり…俺たちの身体、診てくれたり…
「多分…A地区では、あまりいいことなかったんじゃないかな…」
きゅっと水栓を締めると、雅紀は俺の方に向き直った。
俺の身体を引き寄せて抱きしめてくれた。
「…家族に…なれたらいいね…」
「そうだね…智…」