第16章 The beginning of the story6
「あんなに根無し草じゃないけどさ…俺、いろんな病院渡り歩いててさ…それなりに顔が利くってってことだよ」
「でもブラックジャックって、自分の診療所もってなかったっけ?」
「…だからね…あの人は天才だから、いろんな依頼受けてただろう?」
「翔は…天才なの…?」
ごくりと唾を飲み込んだ。
「ぶっ…智ったら…」
コロコロとさっきまでの邪悪な笑みを消すと、笑いだした。
「そうじゃなくてね…常勤を持たない者は、持たないなりの強みってもんがあるんだよ。例えば、どうしても口外したくない治療、とかね?」
ちりょう、って言葉にすごく力を入れた。
「へえ…翔って、結構…」
「ふふ…まあ、俺、孤児だから。そういう抜け道、見る目だけはある」
「え?」
「親、居ないの…?」
「まあね…シュウと二人で、散々苦労して生きてきたんだ」
「もしかして…」
潤が身を乗り出した。
「翔は防衛医科大行ってたのか?」
「潤、よくわかったね」
「いや…俺もね、孤児みたいなもんで…その、そんなに頭良くないから行けなかったけど、防衛大への進学も考えたことあるんだ…だから、翔もそうかなって…」
「…学費も一切かからなくて、給料まで出るんだ…だから…」
「だな…」