第16章 The beginning of the story6
「あ、そうだ。持ってきてる薬さ、学校の保健室だったとこに置かせて貰ってもいい?」
翔が潤の顔を見ると、潤はタオルで顔を拭きながら頷いた。
「つか、大丈夫なの?薬…」
「うん。ちゃんとちょろまかしてきたから」
「ちょろ…」
潤が絶句してると、翔は俺たちに向き直った。
「あのさ、ちょっと今日は提案があるんだけど」
朝食を食いながら、翔の話を聞いた。
「シェルター?」
「うん。もっとしっかりした作りのシェルターをね、作れないかなって思って」
「でも…B地区にはそんなのを作る材料なんか…」
「ん。だからね、俺、毎日布団で寝てて思ったんだけど、地下に作ってみたらどうだろう?」
翔が言うには、あいつらの目的はあくまでも狩りであって、B地区の破壊行為じゃない。
だから、学校に火を着けられることは今までなかった。
まあ、そんなことしたら軍の連中が飛んで来るからね。
できないってのもあるけど。
この建物に侵入することはあっても、破壊行為をしないのであれば、この地下に部屋を作って、そこをシェルターにすればいいんじゃないかってことだった。
「地下ね…今まで考えなかったな」
雅紀が感心したように笑った。