第16章 The beginning of the story6
そのままちょっとウトウトして起きた。
潤はまだ燻ってる感じだけど、これ以上は俺の身体が保たない。
二人で顔を洗いに行くと、手洗い場には翔が居て、窓の外をぼーっと見ていた。
「おはよっ。翔!」
「あ、おはよう。智……潤…」
潤と目が合った途端、真っ赤になって俯いて。
かーわいいんだから…
潤を見ると、こちらも真っ赤になって目を逸らしてる。
けっ…
「あれ、皆早いんだね」
雅紀が起きてきて、やっと場の雰囲気もほぐれた。
「今日も翔はシュウのとこ?」
「うん。B地区の人たちを診察する」
「ありがとうね…ほんと…」
「ううん…治療は、できないから」
だからなんの役にも立ってないって思ってるんだよね。
診てもらえるだけでも、安心するって言ってるのにさ。
ここには犯罪者と、俺みたいな身体の丈夫な障害者もいるけど、そうじゃない連中もいる。
そいつらも固まって暮らしてるけど、やっぱり健常者とは違うから、不自由な生活してるんだ。
ここに来て15年以上になるけど、先天的な障害を持った連中は早く死んでいった。
もちろん、逞しく生き残ってる人もいるけどさ。
新しく入ってくることはない。
だって障害を持って生まれたら、殺されるから。
ごくたまに、俺みたいなのが入ってくるけどね…
後は、雅紀みたいな同性愛の人。
中にはおかまちゃんもいる。
そんな連中の身体を診察してくれるなんて…
ほんと、天使みたいな人なのにさ。
翔はそうは思ってないんだ。