第15章 The beginning of the story5
頭を撫でられるのなんて…いつ以来だろう。
「ここが、風呂…?」
外にある小さな小屋が風呂場だった。
「ああ…虫が入ってくるけど、気にすんな」
電気ランタンを床に置くと、潤は小屋の中央においてあるドラム缶の風呂の下で火を起こした。
そこは外の掘っ立て小屋で。
電気ランタンで照らされた室内は暗い。
どうやらプロパンガスはあるにはあるが、コンロ用でお湯を沸かすのには使ってないようだ。
壁にはシャワーらしきものがあるが、それからは水が出るという。
「さっき、雅紀と智が入ったからすぐ温まると思う」
「そっか…」
潤の横に座って、火を起こすのを手伝った。
「着火剤があればすぐなのに…」
「そんな贅沢なもの、B地区には入ってこないよ」
「…今度持ってくる」
「いいって…いつものことだから、慣れてるよ」
日本は熱帯性気候で、年中温かい。
気温が20度を下回ることはない。
だから、お湯でなくてもシャワーはできるが、やっぱり日本人だから湯船には浸かりたいと思うものらしい。
「水のシャワー、大丈夫?」
「ん。大したことないよ」
訓練を受けてたから慣れてるが、でも潤たちには俺は医者ってことになってるからな…
ここの生活も別に彼らが心配するほど、俺には苦痛じゃないんだ。