第15章 The beginning of the story5
「え?おみやげ?」
智の弾んだ声が教室に響いた。
夕方、クラブを開ける前の時間帯。
この時間は晩飯の時間なんだそうだ。
リビングの教室で、4人で集まれたからおみやげを出した。
「おみやげなんて小学生の時以来だ!ふがっ…」
「翔、そんな気を使わないでよ…」
雅紀が申し訳なさそうに智の口を塞いでいる。
「ぶっ…いや、大したものじゃないから…」
智にはヘアセットをするためのスプレー。
雅紀にはハンドクリーム。
潤には香水の小瓶を買ってきた。
「ごめん…B地区になさそうなもので、実用性のありそうなのって考えたらこうなった…」
「おおー!」
智は前髪を立てるのが好きなんだけど、めったにB地区にはこういう物が入ってこないから、いつもぺしゃんこな頭が嫌だって言ってて。
雅紀は手がすぐ荒れるって言ってたから、天然素材のハンドクリームにした。
潤には…これが似合うと思って、直感で買ってきてしまった。
「なんで俺だけ、香水…?」
「ご、ごめん…なんかその香りが潤と凄く重なって…」
「へえ…」
手首に少しだけ香水を付けると、くんくんと匂いを嗅いだ。
「凄い華やかな香りだな…ありがと」