第15章 The beginning of the story5
「うん…ありがとう…潤…」
松本翔子の両親は、熊本出身だった。
二人とも、松本翔子の死の前年に事故死している。
二十数年前、熊本で事業を失敗し東京に逃げるように上京してきている。
それが何を意味するのか…
パンドラの箱を開けたまま、俺はいつまでも震えている。
俺の…妹…
ごめんな…潤…
俺の顔を見るたび、辛いこと思い出すんだよな…?
それでも俺は…
ここに来ることをやめられない。
一年前に見た情景が、忘れられない。
毛布で潤の身体を包みながら微笑む智。
その智を微笑みながら見つめる雅紀。
二人になにもかもを預けて安心しきってる潤。
お互いがお互いを必要とし、支え合って生きてる。
家族みたいだ、と思った―――
三人がどんな関係かなんて、わかってたことだ。
別に嫌悪感は湧かなかったが、それに与する気もなかった。
なのに…
「わー!翔だ!久しぶりっ!」
リビング代わりにしてる教室に戻ると、雅紀と智が戻ってきてた。
手も服もどろんこで、畑仕事でもしてたようだ。
「久しぶり。智、雅紀」
「もう…翔ったら、本当に来ちゃったんだね…」
心配そうな顔をしてる雅紀に頭を下げた。