第15章 The beginning of the story5
「悪いね…潤…」
「いいや…布団なんかはあるから、別にいいんだけどさ」
小さな教室で、部屋の中は小奇麗にしてあった。
古いけど、絨毯まで敷いてくれてる。
その上に荷物を置くと、潤は俺の後ろに立った。
「…翔…ホントに一ヶ月もここに住むの?」
「うん…迷惑じゃなければ…」
「でも…安全は保証できないよ?またいつ狩りがあるかわからないし」
「いいんだ。それでも…俺、ここの人たちの役に立ちたいんだ」
その気持ちに嘘はなかった。
俺、考えていたことがあって…
狩りの時、避難できるようもっと安全なシェルターを作れないかって。
それができるかどうか…今回はそれも調べるつもりだ。
どうも俺は…こいつらに肩入れしてしまってる。
「翔…」
また潤が、俺の顔を陰のある顔で見つめた。
「ん…?」
見つめ返すと、瞳が揺れた。
あれから…
A地区での過去を調べさせてもらった。
雅紀も智も、過去は学生で止まっていたからそんなに苦労しなかった。
多分二人はB地区で調べたほうが、人物が浮き彫りになる。
でも潤は、4年前までA地区に居た。
その過去は…過酷なものだった。