第2章 Club lunar maria
「あのね、ニノちゃん…」
「なあに?」
「この部屋、ベッドが一つしかないんだ。だから、ニノちゃんここで寝て?俺、他の部屋いくから」
「えっ…だめだよそんな…」
「まだニノちゃんは体調が万全じゃないんだから。このベッドならよく眠れると思うからさ」
「や、やだっ…じゃあ、雅紀も一緒に…」
「えっ」
「一緒に、寝ようよ…?」
そこまでいうと、雅紀は悲しそうな顔をした。
俺の前までくると、しゃがんで目線を合わせた。
「あのね、ニノちゃん…俺、ゲイなの」
「え…?うん…」
「今日ね、ずっと一緒にいて、ニノちゃんのこととってもかわいいなって思ったの…わかる?」
「え…?」
「だからね、一緒に寝たら…どうなっちゃうかわからない」
真剣な眼差しで雅紀は言う。
「だから、別々で寝ようね?」
そう言って、立ちあがって俺に背中を向けた。
「どう…なるの…?」
頑なな背中に問いかけた。
「え…?」
「どうなっちゃうの…?」
「ニノちゃん…」
雅紀の背中に抱きついた。
「ひとりに…しないで…」
「だめだよ…ニノちゃん…」
「お願い!雅紀っ…」
細いけど靭やかな身体に回した手に力を入れる。
お願い…
この闇の中に、一人にしないで…