第15章 The beginning of the story5
防衛医科大学校は、普通の大学と違って合格すれば防衛省職員だ。
学費もいらないし、なんなら給与に相当するものも貰える。
試験だって無料だし、入学金もない。
採用試験(入学試験)に合格し、引っ越しの費用だけどうにか工面して、俺は熊本を捨てた。
普通の医科大学と違って、給料を貰いながらの勉強だから、全員必死だった。
孤児の俺にとっては、余計なことを考えないでいい環境で、幸いにも成績は常に上位をキープしていた。
4年も終わりにさしかかり、これから実地にでようとしていた矢先、俺はある人からスカウトを受けた。
政府の諜報機関で働かないかという話で。
年度の途中であったが、防衛医科大学もきちんと卒業したことにする。
身分的なものも同等にするし、住居などの心配もない。
希望すれば医師の勉強も続けられる。
もし、何か事故に遭って重篤な障害が残っても、その後の生活の保障も十分にするということだった。
とても信じられない話だったが、実際に永田町の地下のスエード本部に連れて行かれて、その話が本当だということは確認できた。
初めてだった
人に、必要とされるのが
俺は喜んで引き受けた。
あとから聞いたら、どうも俺の身上が、良かったようだ。
独身だし孤児だから危険な任務で死んでも、親族から訴えられることがないから…ってことだったらしい。
それでも…良かった
天にも地にも、縁者なんて居ない俺に巣ができた。