第14章 The beginning of the story4
ここに来てから数日、潤は塞ぎ込んでいるように見えた。
原因は翔であることは明らかで。
でも翔と潤は面識がないようだし、潤の態度を見ているとなにかをされたわけでもなさそうだった。
智はそんな空気を察して、翔によく話しかけた。
翔も何かを感じ取ったのか、努めて明るくしてるように見える。
シュウの兄貴なら、悪い奴じゃなさそうだし。
弟を心配してこんなところまで忍び込んでくるほどの肝の持ち主だ。
頭もいいし、何より俺達のことは感づいているんだろうけど、軽蔑する素振りも見せてなかった。
智と翔はすぐに打ち解けたし、俺も翔に思うところはなかった。
ただ、潤だけが…ぎこちないままだった。
「そう…かもしれないね…似てるのかな…」
「うん…」
時折、潤が見たこともないような顔で翔を見つめていることがあった。
その目は、愛おしい人を見る目で…
「もしかして、奥さんとか恋人だったのかもね…その”しょうこ”ってひと…」
智が寂しそうに呟くと、潤の手を握り直した。
「…忘れられない人なんだね…」
俺たちに、過去はあってないようなもので…
政府によっていない人間にされている俺たちの過去なんて、あっても意味のないものだった。