第14章 The beginning of the story4
「やっと、眠った…」
ホッとしたような智の声が聞こえた。
「潤、泣いてる…」
潤の青白い頬を、心配そうに撫でる智は俺を見上げた。
「…A地区に居た頃のこと、思い出したのかな…?」
「さあ…どうだろうね…」
潤がここに来てから3年が過ぎた。
その間、俺たちは自然のなりゆきでそういう関係にはなっていたが、潤が自分の過去を自ら喋ることはなかった。
だから…今、潤が何を思って泣いているのかなんて…俺たちにはわからなかった。
「あの…雅紀、智…俺、やっぱり…」
翔が小さな声で言ってくるが、遮った。
「翔は気にしないの。潤もそう言ってるし」
「そうだよ。今出ていったら狩りの餌食になるよ?」
「でも…」
「潤は、ここに居てくれって言ったでしょ」
「そうだけど、でも…」
「気にしないの、ね?」
智が毛布で潤の体を包んだ。
「体、ちょっと冷えてる」
二人で潤を温めるように抱きしめる。
ふと見ると、翔はどうしたらいいかわからないって顔でこっちを見てた。
そっか…免疫ないよな…
「ごめん…俺たち、そういう関係なんだ」
「え…?」
「俺は、所謂ゲイってやつ。智や潤は違うけど…」
でも、俺たちにはこうするしか道はないんだ。
だって、ここには”異性”なんて存在しないんだから