第14章 The beginning of the story4
電池もろうそくも限りがあるから、なるべく無駄遣いしない。
真っ暗な部屋で、俺たちは丸まって何日も過ごした。
「足、どう?平気?」
食事のときだけ、最小限の明かりをつける。
ぼんやりと3人の姿が見える程の明かりだ。
A地区の人間はこんな生活慣れていないから、雅紀や智が何くれとなく櫻井翔の面倒をみている。
俺は、まだ顔がちゃんと見られないから…
少し引いて見てるだけだ。
「うん。安静にしてるのがいいみたいだ。もう痛くはないよ」
「お医者さんだったら、わかるか…俺、余計なことしちゃったな」
「いや、捻挫なんて小学生か中学生の時以来だから…それに俺、内科だし」
そう言って苦笑いする翔は、こんな状況なのに全然焦っても居なくて…
俺は、最初にここに来てこんな状況になった時、こんなに落ち着いていることはできなかった。
やっぱり医者だから肝が座っているのか。
「ふふ…じゃあ風邪引いたら診てもらお」
智が言うと、翔も笑う。
その時、外で銃声が聞こえた。
「…まだ…やってやがる…」
翔は呟くと、外の方に顔を向けた。
その横顔が、翔子と重なった。
『私、ちゃんと潤の子供……』
「っ…」
猛烈な吐き気が俺を襲って、たまらず隅で吐き出した。