第14章 The beginning of the story4
ポリタンクを隅に置いて、懐中電灯で部屋の中を照らした。
「え…?」
心臓が止まるかと思った
「翔子っ…」
死んだはずの嫁がそこに居た。
懐中電灯の明かりに照らされて、驚いた顔を俺に向けている。
「え…?」
でも、その声は男のもので…
「潤、何言ってんだよ…」
智に肩を掴まれて我に返った。
「アンタ…誰だよ…」
そいつは驚いたまま、何も言わない。
「オイっ…!」
「潤っ…どうしたんだよっ!」
雅紀がかばうようにそいつの前に立った。
「だって、こいつ見ない顔じゃないか…誰なんだよ」
「ちょっと落ち着いて…」
智が備蓄しておいたろうそくに火を着ける。
ここは、窓もないから明かりは外に漏れる心配はない。
部屋がぼんやりと明るくなって、もう一度その男を見る。
見れば見るほどそっくりで…
「店で逃げ遅れていたんだよ…シュウの連れだよ」
雅紀がとりなすように言うと、その男は頷いた。
「俺は…シュウの兄だ」
「え?」
「どういうことだ…」
その男は情報屋のシュウの兄で、A地区からB地区に不法侵入して弟に会いに来たということだった。