第14章 The beginning of the story4
A地区の人間がB地区に入ることは禁止されている。
境目には防潮堤のような高い壁が築かれて、そこは日本国の軍隊で警備されている。
しかし何処の掃き溜めでもあるように、ここにはA地区から物資が流れてくるし、電気だって辺境警備の軍部から盗んできてる。
抜け道はあって、そこは軍部も目こぼししているし、完全に遮断されているわけではなかった。
「足を挫いてたね。見せて?」
雅紀が救急セットを取り出した。
「い、いや、こんなの大したこと…」
「いいから」
だから逃げ遅れたってわけか…
「シュウは足を挫いたあんたを置いていったのか」
「潤!なんでそんな言い方するの。おかしいよ?」
「そうだよ…俺がここに来るといいって言ったんだ。ここには余分に食料もあるし…」
智には怒られ雅紀には諭されるように言われたけど、どうしても抑えることができなかった。
コイツは男だ。
なのになぜ、翔子と同じ顔をしている。
わけが分からなくて、思考がぐるぐるして定まらない。
「ここに忍び込む時に…挫いてしまって…」
言い訳をするように小さな声で男は呟いた。
「そっか…A地区の人だもんね。無理もないよ」
智が明るく言うと、男は少し笑った。