第12章 The beginning of the story3
雨が…降り止まない
冬の空はどこまでも暗く、重い雲が立ち込めていた。
「雨、よく降るねえ…」
病室のベッドから窓を見上げる翔子の頬に、幾分か赤みが戻ってきた。
「赤ちゃん…早く元気になるといいな…」
翔子が俺を見て微笑む。
「そうだな…でも翔子が元気にならないと、会えないぞ?」
「うん。わかってる。頑張るから…」
そう言うと微笑で目を閉じた。
あれから一週間が過ぎたが、未だに翔子には何も話せていなかった。
受けるショックの大きさを考えると、身体の回復を優先させたほうがいいと医師とも相談した。
赤ん坊に、病気が見つかって…
だから大きな病院に運ばれたのだということにした。
幸い、翔子は帝王切開の傷が癒えないと動けない。
だから赤ん坊には会えないのだと納得させた。
命に別状のある病気ではないと話してあるから、翔子も安心しているのだろう。
会いたいと泣くことはあったけど、無理はしなかった。
「名前…なんにしようか…」
「…え…?」
「赤ちゃんの名前…ちゃんと決めてなかったよね?入院しちゃったから…」
「あ、ああ…そうだな…」
「もう!潤ったら…出生届出さなきゃいけないんだからね?」