第2章 Club lunar maria
シュウの部屋を出たら、智が歩いてくるところだった。
「あ、お店みてたの?」
「うん。これからぼちぼち回ってくるよ」
「そっか。行ってらっしゃい。ニノ」
智はぽんぽんと俺の頭をなでて歩いて行った。
「さ、行こうかニノ…」
廊下の先に、色とりどりの灯りが見えた。
そこはまるで日本じゃないみたくて…
東南アジアの市場を思わせた。
どこからか肉を焼く匂いがする。
別の場所からはお香の匂い。
階段からガヤガヤと人が上がってくる。
靴音がだんだん大きくなると、次々と人が二階に上がってきた。
「よーマサキー」
「今日、クラブ行かないの?」
人々が雅紀に話しかけていく。
雅紀は笑顔でそれに答える。
「雅紀は人気者なんだね…」
「えっ…違うよ…ただ、ここに長く居るってだけだよ…」
雅紀は寂しそうに笑って俺の手を引いてくれた。
飲食店やお店を案内してくれながら、ぎゅっと俺の手を握っていてくれる。
一通り回ったら、今度は3階へ連れて行かれた。
「ここは何があるの?」
「ん?そうだね…ここは貸部屋なんだよ。下で買ってきたものを食べたり飲んだりするの」
やっぱりここもドアもガラス窓も全部取っ払われてて。
教室の中には絨毯やラグが敷き詰めてあるだけだった。
天井からいくつもコードが伸びて、その先にはカラフルな電球がいくつも点いていた。