第12章 The beginning of the story3
コーヒーを飲み終わって分娩室の前に戻るが、一向に時間は進まなかった。
長い長い時間をそこで過ごした。
手術中のランプが消えて、扉が開いた。
中から医師が出てくると、俺はすぐに呼ばれた。
相談室まで行くと、疲れ切った顔をした医師が向かいに座った。
「松本さん…非常に残念です…」
あれほど俺を父親としてなっていないと静かに怒っていた医師は、あの時みたいにまっすぐ目を見なかった。
嫌な予感しかしない。
「母体は…無事です。縫合も問題なく…」
「じゃ、じゃあなにが残念なんですか!?」
「お子さんが…」
医師は口を噤んでしまった。
「どういう…どういうことなんですか…」
「障害が…ありました」
「えっ…」
今の日本では…
障害があるというのは、死と同等の意味を持っている。
成人に障害が見つかった場合、B地区に護送され一般社会から隔離されるが…
出生して3日以内の乳児に障害が見つかった場合は
殺される運命だった
「は…?何を仰ってるんですか…?」
「松本さん…これはこの国の法律であり、この病院の規則です。直ちにあなたのお子さんは…労働厚生省に引き渡されます」