第12章 The beginning of the story3
ふざけて笑った翔子はとっても綺麗だった。
これが母親になるってことなのかな。
新婚の頃も、付き合った頃も綺麗だと思った。
けど、この時の翔子の笑顔はとても神聖だった。
「潤くんっ…こっち!」
そんなある日、翔子が産気づいた。
陣痛が来たとおばさんから連絡があって、慌てて会社を早退した。
タクシーで病院に駆けつけると、おばさんが待ち構えていた。
「えっ…もう分娩室!?早くない!?陣痛来たばっかりだよね!?」
「そうなのよ…でも、先生がもう分娩台にって…」
翔子は初産だから、陣痛からが長いだろうねって話をしてた。
それが、陣痛がきてからこんなに早く分娩室に入ることになろうとは…
「大丈夫よ…もしかして、翔子ちゃんって安産型だったのかもね!」
不安になってしまった俺をおばさんは励ましてくれようとしていた。
「うん…」
でも…
翔子のやつれ方が気になっていた。
医者には体力的な問題があると言われたが、なるべく通常分娩でいきたいと翔子が希望していた。
なにかあった場合、帝王切開に切り替える。
そういう約束になっていた。
バタバタと分娩室から看護師が出てきた。