第12章 The beginning of the story3
「切迫流産の危険があります。入院が必要ですね…」
まさかの医師の言葉だった。
「え?そうなんですか…」
「それに…今の段階だとなんとも言えませんが、胎児の心音が少し弱い…通常分娩は難しいかもしれませんね…」
嫁の翔子は絶対安静とかで、もうすでに病室へ運ばれたそうだ。
「あの~…」
「なんでしょう?」
「大変不勉強で申し訳ないのですが…」
「はい。なんでも聞いてください」
「セッパクリュウザンとはなんでしょう?」
今朝、起きてみたらベッドの隣にいるはずの嫁が居なかった。
トイレにでも行ったのだろうと、二度寝を決め込もうとしたらキッチンから大きな音が聞こえた。
この小さなマンションは音がよく響く。
寝室から慌ててキッチンに出てみると、嫁が料理の途中で床で蹲っていた。
こんなこと初めてだったから、慌てて救急車を呼んで担当医のいるこの病院に担ぎ込んでもらった。
「…旦那さん…奥さんとちゃんとコミュニケーションは取られていますか?」
ため息混じりに、どうやら非難されているようだと感じた。
「いえ…それがその…妊娠がわかってから残業続きで…」
「言い訳ですな。その分だと、家事負担も妊娠以前とかわっていないんでしょう?」