第12章 The beginning of the story3
ごめん…
ごめんね…
普通に生まれてこなくてごめんね…
「この子が一体何をしたと言うんだ!?」
「…なにか勘違いされてるようですが…これは法律で決まった行為ですので、あなたたちに止める権利はありませんから」
「世の中のため、業務を…遂行するのみです」
なにがだよ…自分とちょっと違うっていうだけで、いじめるやつらと一緒じゃないか
「あなたも人の親ではないんですか!?どうか…どうかこの子を助けてくださいっ…」
ふっと町田を捕まえるスーツが嫌な笑い方をした。
「私の家の子は、健常者ですから」
バカにしたように吐き捨てると、俺を引きずって家を出た。
「智ーっ…」
姉ちゃんが泣きながら家を飛び出してきた。
護送車みたいなごつい車が家の前に止まってて、俺を押し込めようとしていた。
「なによっ…あんたたちのほうがよっぽど頭おかしいんじゃないっ…なんでこんなこと平気でできるのよおっ…智を返してっ…」
姉ちゃんの後ろからとうちゃんとかあちゃんが飛び出してきた。
その後ろには、町田が真っ青な顔をして立っていた。
俺は精一杯の笑顔を作った。
「いってきます!」
一瞬、その場がシーンとなった。
近所の家からも人が出てきて、俺のこと見てた。
「い…って…らっしゃい…智…」
かあちゃんが、泣き笑いで手を振ってくれた。
「智っ…必ず元気で帰ってくるんだよ!姉ちゃん待ってるから…」
頷いてみせると、姉ちゃんは最近見せなくなったおもいっきりすごい泣き顔をした。
「はは…ぶっさいく」
「うるさーいっ…バカ智っ…」
「バカ美奈ーっ…」
「黙れ黙れっ…!元気で帰ってこないと許さないからっ…」
「わかったって…じゃあな!」
ぐいっと腕を引かれて車に乗せられた。
「智っ…」
とうちゃんの声がした。
「思い出せっ…俺は、お前に生きていく方法を伝えたからな…!」
ドアが閉まって、それきり何も聞こえなくなった
後々考えたら、とうちゃんは俺になにもないB地区で生きていける術を教えてくれていたんだと思う。
料理だったり、野菜や果物を育てることだったり…
とうちゃんの仕事には関係のない話を延々と聞かされていたから…
今でも俺は、みんなに生かされている