第12章 The beginning of the story3
大人数の足音が聞こえたかと思うと、とうちゃんの怒鳴り声とかあちゃんと姉ちゃんの泣き叫ぶ声が近くなった。
座敷に人の入ってくる気配がしたかと思ったら、乱暴にふすまを開けられた。
「いたぞっ!こっちだ!」
「出てこいっ…」
スーツを着た男の人が、何人も座敷の中に居た。
「おい、二人いるぞ」
「どっちだ?」
俺と町田を見比べて首を傾げてる。
「おまえだな?おい!大野智!」
町田を捕まえてたおっさんが怒鳴りつけるのを見て、頭にきた。
「違うっ…それは俺の友達だ!俺が大野智だよっ…」
「黙ってなさいっ…」
かあちゃんのこんなヒステリックな声、初めて聞いた。
「かあちゃん…町田に迷惑かけらんないだろ…」
後ろに居たスーツが、俺と町田のカバンを探って生徒手帳を持ってきた。
「こっちが大野智のようです」
俺を捕まえてたスーツが頷いた。
「君が大野智だね。私たちは労働厚生省の者だ」
そう告げる口が、なんだか滑稽なものに見えて…
紙粘土でいつか作りたかったな
なんてぼんやりと思った。
「やめてっ…智を離してっ…どこにも障害なんてないっ…」
「勝手なことをするな!智は俺達の息子なんだぞ!?」
「智っ…智っ…」