第12章 The beginning of the story3
ぱたぱたとスリッパを鳴らしながら、かあちゃんが玄関に向かった。
「じゃあ、このゲームどうだ?」
「あ、いいっすね。やりましょう!」
「お、町田くん度胸があるね」
「俺これ得意なんっすよ」
「智、変われ」
「なんだよ!とうちゃん!」
リモコンを押し付けられていたら、玄関からかあちゃんの叫び声が聞こえた。
「なんだ…?」
町田が呟くと同時に、とうちゃんはリビングを飛び出していった。
「智っ…こっち!」
ねえちゃんが俺の腕を引いて隣の座敷の押入れに俺と町田を入れた。
「いいって言うまで出てきちゃだめだからね?」
そういって俺たちを押入れに入れた。
ふすまが閉じられて真っ暗になると俺は悟った。
来るべき時が来たのだと
「町田…」
「なんだよ…」
心なしか、声が震えてた。
「大丈夫だって…大野、大丈夫だから…」
「うん…あのさ、お願いがあるんだ」
「…なんだよ」
外ではとうちゃんの怒鳴る声が聞こえてる。
「俺が連れて行かれたら…みんなにありがとうって言っといてくれる?」
「大野…」
「…いつか言わなきゃって思ってたのに…言えなかったからさ…」
ぐっと町田は俺の肩を掴んだ。
「わかった。絶対に伝えるから…」