第12章 The beginning of the story3
「美奈ー!智ー!ごはんよー!」
下からかあちゃんの呼ぶ声がする。
「わ!もうそんな時間か。いくよ、智」
「おん」
二階から降りていくと、台所に入った。
ダイニングテーブルにはたくさんの料理が乗っかっていた。
かあちゃん、いつも作りすぎんだよな…
とうちゃんが新聞を読んでるのを、姉ちゃんがひっぺがした。
「おとーさん!いつまで読んでるのよ!」
「美奈…いいところだったのに…返して…」
「もう、いただきますだからだめっ」
「美奈ぁ、これ運んで~」
「えっ…まだあんの!?」
俺のうちは、いつも賑やかだ。
とうちゃんはしょんぼりとテーブルに向き合った。
「智…お茶…」
「ん」
ガラスポットに入ったお茶をコップについでやると、とうちゃんはちびちびと飲み始めた。
「智、後でゲームしようか」
「…うん」
明日、中学の入学前検査だから…
きっと聞かれるであろうことの予習をするんだ。
小さい頃からのこれは習慣で。
なにか検査とかある前の日は、ゲームだと言って必ず予習させられる。
だからこそ…
字が読めないという障害を抱えた俺が、無事にここで暮らして来ることができたのだと思う。