第12章 The beginning of the story3
「あー…肩凝るわ…」
姉ちゃんが首をぐきぐきと鳴らした。
「…ごめん、姉ちゃん…」
「いいのよ。しょうがないもん」
いつもそう言って、俺の宿題を手伝ってくれる姉ちゃんはもう中学生で。
小学生の俺のレベルに合わせて文章を書くのが大変だと、ぼやいてる。
でも決して俺の障害について文句を言うことはない。
「で?もう書くことないの?卒業文集」
「うん…だって文が浮かばないもん」
勉強机に肘をつきながら姉ちゃんはシャーペンを鼻の下にはさんだ。
「まー、小学生ならこんなもんでしょ」
「さんきゅっ!」
ぴらっと紙を俺に渡すと、姉ちゃんは笑った。
「あんた、中学入ったらもっと大変なんだからね!ちゃんとすんだよ!」
「うん…」
そんなこと言っても…
もう俺、ついていけてないんだよな…
薄々みんなは気づいてる。
今まで精一杯庇ってきてくれてたけど、もう限界じゃないかな…
学校の先生は、多分わかってて見逃してくれてるんだろうなって感じてた。
現に、たったこれだけの文章を俺は文字にすることができなかった。
姉ちゃんの書いてくれた紙を見ても、読める文字は簡単なひらがなばかりで。
少し画数の多い漢字になると、もう読めなかった。