第2章 Club lunar maria
照明が少ないから薄暗い校舎の中を雅紀の手を握って進む。
繋いだ手が、なぜだか酷く安心した。
昇降口にくると、暗い階段室の灯りを付けた。
「まだ営業時間じゃないから、電気ついてないんだ」
そう言いながら雅紀は階段を登りだした。
ミシミシと階段が音を立てる。
木の手すりに掴まりながら、上をみあげる。
どこまでも木造だった。
こんな建物、今まで入ったことなかった。
博物館に、昔の小学校だという木造校舎が展示されてたけど、危険だからって立ち入り禁止だった。
「あ…」
「どうしたの?ニノ?」
「はくぶつかん…」
「え?」
「博物館に行った…」
「何か思い出せそうなの!?」
「う…」
また頭を締め付けるような痛みがきて、そこでわからなくなった。
「だめだ…博物館に行ったことは…思い出した」
「そっか。どんな博物館?」
「…ここみたいな木造の校舎の学校が展示してあった」
「ふうん…翔に聞いてみたらなにかわかるかもね」
だから、かな…
なんだか見たことあるって思ったのは…
懐かしいって思ったのは学校だから…?
わからない…わからない…
「…あせらないでいいから…ね?」
そっと手を引いて、雅紀は階段を登り始めた。