第11章 The beginning of the story2
近いうちにこの東京ラボを出て、ホムンクルス専用の研究所に移る。
これは坂本社長が前から準備してくれていたものだ。
俺の腕の中のN1N0は俺を見上げてまだ泣いている。
「うるさいなあ…」
赤ん坊は泣くのが仕事だと聞いたが、これは騒音でしかない。
「泣くな」
そう言っても、まだこいつには日本語は通じない。
泣き続けるホムンクルスを抱いたまま、俺達は途方に暮れた。
「おむつですかねえ…」
そう言って女性研究員はN1N0のお尻を触った。
「あ…」
なんとかおむつを替え終わって、誰もいなかったから俺が暫くN1N0を抱いていた。
さっきとは打って変わって、すやすやとよく眠っている。
「長野博士、暫くお願いします」
そう言って女性研究員はクリーンルームを出ていった。
手にはゴミをたくさん抱えてる。
なんてことだ…
ヒトの赤ん坊一人育てるのに、こんなに労力が掛かるとは…
世の母親は一人で一体どうしているのだろう。
俺には両親がいないから…
想像もつかなかった。
眠ってしまったN1N0を抱えて、ゆすりながらクリーンルームを歩き回る。
こうやって居ないと、深く眠らないということだ。