第11章 The beginning of the story2
N1N0を抱く女性研究員は、おっかなびっくりで。
「博士…ヒューマノイドはまだですか…」
これだから研究しかやってこなかった女は…
「ヒューマノイドの投入はまだ先だ。あいつらは細かい仕事に向かないから、乳児の扱いなんか任せられん。せめて歩くようになってからだ」
「でも…ちょっとこれは…」
科学畑の女に子育てなど無理だといいたいのか。
「わかった…保育士を雇おう…」
「ホントですか!?」
大きな声を出すものだから、N1N0が泣き出した。
「ああ…ほら、よこせ」
「すいません…」
白いスモッグに身を包んだ俺の腕に、N1N0が渡された。
ほんのりとミルクの匂いが漂ってくる。
「乳臭いな…」
「さっき飲んだばかりですもの…」
もう半年、こんなことをやっているから慣れてきた。
N1N0はもうどこから見ても、ヒトの赤ん坊だった。
つい最近まで保育器の中で育てていたが、もう大丈夫だろうということで、通常の環境で育てている。
と言ってもクリーンルームの中だが。
研究員は独身者が多いから、N1N0の世話にはえらい苦労をした。
これは俺にとって想定外だった。
せいぜい、保育士が来るまでは俺のチームで育ててやろう。