第11章 The beginning of the story2
坂本さんは、この年の暮れ社長になった。
経営権を手に入れた会長を後ろ盾に、ホムンクルスの成功を武器に遂にのし上がったのだ。
そう…ホムンクルスは成功した。
坂本さんの社長就任と共に、この成功は全世界に報道された。
ありとあらゆる研究機関から問い合わせがあって、一時東京ラボは機能停止寸前だった。
そこを坂本さんが上手くカバーして、なんとかラボでの騒動は落ち着いた。
N1N0は普通のヒトの乳児となんら変わりない姿に成長した。
坂本さんの戦略で、N1N0はアースノールの広告塔になる。
派閥争いに勝利した坂本さん側についた俺は、主席研究員を通り越して、取締役の席につくことになった。
どうしてもというので、条件付きで引き受けた。
俺は現場を離れない。
取締役の仕事については、半ば放擲でかまわないと。
坂本社長の肝いりだから、あっさりと条件は受け入れられた。
俺は駒になったが、まあそれもいいだろう。
「長野入ります」
ラボの一等地にあるクリーンルームは、相変わらずN1N0のための部屋だ。
たくさんの研究員がここに詰めて、この人工生命体を見守っている。
クリーンルームのドアが開いて、中に足を踏み入れた。
「どうだ。N1N0の調子は」