第11章 The beginning of the story2
「…アレが成功したら…とんでもないことになるな…」
「ええ…でも坂本さん」
「ん?」
「どれだけやっても…N1N0を再現できないんですよ…」
「…そうか…」
「引続き、合成は続けていきますがね…」
坂本さんはガラスに手をついて、水槽を眺めた。
「…ま、そういうこともある」
暫く眺めて居たかと思うと、坂本さんは俺を振り返った。
「長野博士。ここだけの話なんだがね」
「ええ」
「こいつが成功したら、社長を退陣に追い込もうと思う」
「は?」
「会長と社長の溝が深まっているのは君だって知っているだろう?」
「…それと、僕がなんの関係があるんです…」
「もしもこのN1N0が上手くヒトになったら、君は俺につかないか」
にやりと笑って俺を見た。
「これが成功したら、君は間違いなくアースノールの主席研究員になるだろう。その君が俺についたとなると…わかるだろ?」
またでたよ。わかるだろ?…知るか。
「僕にはとんと興味のない話です」
「まあそう言うな」
「僕のチームがこれからも変わらず研究を続けていけるだけで、僕は満足です」
「ならば、それは俺が保証しよう」
「……いいでしょう」
「よし。決まったな」