第11章 The beginning of the story2
最近、千代田区のど真ん中に住むやんごとなき方に後継が生まれたと聞いた。
「…すべて、この長野博士の進めたことです」
場の注目が集まった。
俺はペコリと頭を下げると、モニターのN1N0を眺めた。
時々、手のひらを開いて握って…
本物の胎児のようだった。
「まだ最終的な合成DNAの投与をしていないので、結論は数ヶ月の内に出せると思います。このまま進めさせていただきます」
異存はなかった。
この数ヶ月、ゾクゾクしっぱなしだった。
これが成功したら…
一躍アースノール社は世界的に有名になる。
人類初のホムンクルス…
もしも量産することができたら…
日本国は無敵になる。
しかも普通のヒトよりも成長が二倍早い。
長年のアースノールのクローン研究が大いに役に立った。
袋状の水槽に浮かぶN1N0は、今か今かと地上に出る日を待っているように見えた。
俺の手で作り出した生命…
俺は…神になった
「長野博士」
「坂本さん」
「明日だったね?最終投与は…」
N1N0の水槽は今やラボの一等地に移されている。
大きなクリーンルームの中にぽつりと浮かんでいる培養水槽を二人で眺めた。