第11章 The beginning of the story2
モニターを見ながら、アースノールの重役たちは黙り込んだ。
坂本さんが巨大なモニターの横で突っ立って説明をしている。
俺はその横で、説明のフォローを入れている。
学会の発表なんかと違って、難しいことはいい。
とにかく今なにが起きていて、どうなっているのかさえ伝わればいい。
企業とは楽なものだ。
「えー…あと数日もすれば、最後の合成DNAを注入いたします。そうすれば、このN1N0がヒトとして成長するための情報は全て与えられるということになります」
坂本さんが説明する合間に、重役たちは資料をめくり目をギラつかせている。
「…もうこのN1N0はヒトとして生命活動を単体でできる状態なのか?それともこの培養液の中でないと生きられないのか?」
「それは最後のDNA注入により変わると思います。現在は培養液の中でしか生きられません」
坂本さんが俺の顔を見た。
「…このN1N0は通常のヒトの胎児よりも2倍のスピードで成長をしています。N1N0の肉体はほぼ出来上がっています。最後の合成DNAの注入は謂わば、陸に上がったエラ呼吸の動物が地上に順応するようプログラムされているものです」