第11章 The beginning of the story2
大体、人間のクローンなんて旧法から禁止されてる。
政権が代わって新法ができてもそれは変わらなかった。
国際通念でも、人間のクローン研究はタブー視されているんだ。
その点、ホムンクルスは取り締まる法がない。
大体、できるはずがないと誰もが思っている。
人間が人間を作り出す。
こんなバカなこと、本気で取り組んでいる会社なんてごく僅かだ。
でもだからこそ…
この研究が成功すれば、競合他社もいない。
日本国どころか、全世界の史上を独占できるんだ。
どれほど莫大な利益を生み出すか、わからない。
人間のクローン研究なんかよりも、よっぽど未来がある研究だというのに…
「長野博士…落ち着いてください」
「僕は落ち着いています」
井ノ原さんは眉を顰めて俺の肩に手を置いた。
「博士は若い頃からホムンクルスの研究一筋で来られた方だ…それが否定されるのはお辛いと思います。だから…」
その話は耳を疑うものだった。
信じられない思いをしながら、一旦話を打ち切られて大会議室に入らされた。
重役共は俺を冷たい目で見つめていた。
だが別に責められるようなこともなく、俺の糾弾大会になるわけでもなく。
粛々と会議は進行していった。