第9章 HEAVEN
「本当に大変なのは、これからだろうなあ…」
智がため息まじりに言った。
「だろうね…ここからが本当にA地区とかB地区っていうのを無くしてく闘いなんだからね…」
「うん…」
智は下を向いてしまった。
字が読めないことを気にして、智は畑仕事ばっかりして、この仕事にはあんまり関わっていなかった。
それも大事な仕事だったから、誰も智を責めることなんてしなかったんだけど、やっぱり智は気にしてる…
「智…俺達は、俺達のできること、やろうよ…」
「うん…」
智には素晴らしい芸術の才能があった。
字がかけないから、絵や歌の才能が飛び抜けていた。
だからクラブでもひっぱりだこだし、ファンも大勢いる。
それでも…役に立っていないと、落ち込んでいるのだ。
「雅紀も行けばよかったじゃん」
「俺?なんで?」
「だって、雅紀だって仕事たくさんしたじゃん」
「んー…俺は…」
俺は…もしもA地区とかB地区がなくなったとしても…
ここを離れることができない気がする。
もしも皆がここから居なくなったとしても…
俺だけはここに残ろうと思っている。
ここは…俺達の家だから。
「いいんだよ。裏方で」
「なんだよ…それ…」
そうは言ってるけど、智は俺の手をぎゅっと握った。
「ありがと…雅紀…」