第8章 ユメノドリーム
「…ありがとう…翔…」
ニノは深い笑みを湛えた。
「な、なんだよ急に」
「10年」
「え?」
「10年…いや、5年のうちになんとか独立のこと形にする。だから、それまで翔にはA地区に居て欲しい」
「え…」
「形になったら、シュウと任務代わって、B地区に住もうよ!」
「えっ…あっ?えっ?」
「レールさえ引いちゃえば、こっちのもんだよ!」
ものすごく脳天気に、無邪気にニノは言い放った。
潤が立ちあがって笑った。
「乗った!ニノ先生!俺もそれ、乗った!」
「俺も俺も!」
智も挙手して立ちあがった。
「…家族で…住もうよ?翔…」
ニノが翔の手を握ったまま言うと、翔は俯いてしまった。
そのまま黙り込んで、何も言わない。
しばらくしたら、肩が震えだした。
「…翔…」
「もう、泣くなよ…」
潤が翔の肩を包んだ。
「泣いてないわっ」
「かわいい…翔」
べしっと智の手を叩くと、翔は顔を上げた。
目が真っ赤だった。
「全力を、尽くす」
そういい切った翔の顔は、すっきりしていた。
「お願いねっ!スエードの協力なしじゃ、この話はなかなか進まないからさ」
「…ああ…利用できるものは、なんでも利用しよう」
にやりと不敵に潤が笑ったのを見て、翔は肩をすくめた。