第8章 ユメノドリーム
「ニノ…?」
「うん?」
「苦しくは、ないか?」
「…うん、苦しくはない。むしろ、前よりも僕、人間に近くなった感じがする」
「そっか…」
「当たり前だよね…カズは33年間人間として生きてるし…でも、僕たちね…同じだったんだ…」
「え?」
「人形だったんだよ…僕たちは…」
「ニノ…」
「カズはね、母親の操り人形だった。そうじゃないと愛してもらえなかった。N1N0は最初から人形だったしね…」
ニノは少し微笑んで、手を握りしめた。
「多分…一人ずつだったら、また死んでたと思う。でもB地区に来て、翔や雅紀、潤や智にちゃんと人間として触れてもらって…僕たち、何が一番苦しかったか気づくことができたんだと思う」
ぽとり、一粒だけ涙が落ちた。
「今は…苦しくない。むしろ、しあわせだよ?翔…」
「ニノ…」
「僕たちが生きてる…生きていく理由が見つかったから」
「…ただ生きてるだけでいいんだよ?ニノ…命は、そこにいるだけで尊いんだよ」
「うん…でも僕たちにはそれがわからなかったんだ…だから、ね。それを、僕たちは学んでいかなければならない…」
「そうか…」
「雅紀や…みんなは僕にそれを教えてくれる。だから、僕…」
「ん?」
「みんなに天国を作るんだ」