第8章 ユメノドリーム
通電してないから、冷蔵庫も動いていない。
氷を作ることができないから、ひたすら濡れタオルをニノの額に乗せていた。
すぐに温かくなるほど、熱が高い。
「俺、解熱剤取ってくる…」
「気をつけて…」
潤が穴蔵を出ていくと、入れ替わりでシュウが来た。
「どうしたの?」
「ニノが熱出しちゃって…」
「そうか…無理させたかな」
「わかんない…」
「あ、偵察行ってきた。多分、夜の狩り出ないと思う」
「えっ?なんで?」
「まだじいさんたち寝てた」
「よっぽど怖かったんだね…」
「だろうね…だってまともに考えたら、殺人してんだからね。虐殺の末路はクメール・ルージュってね」
「え?」
「なんでもない」
そう言うとシュウは鼻の頭を掻いた。
「大きな火を焚いてたから、今日は多分あそこから動かないよ。油断はできないけどね」
「ああ。わかった…ありがとうな、シュウ」
「ううん…俺も、できることは協力するから」
しっかりと俺の目を見て言ってくれた。
「…ありがとう…」
いつかはA地区に戻っていく人間なのに…
本当に感謝しかない。
「しかし、あんな大きな火焚いて…よっぽど怖かったんだろな」
「自分の胸に手を当てて、やっとやってることわかったんじゃない?」