第8章 ユメノドリーム
じいさんたちは、一種の恐慌状態に陥ったようだった。
「ば、馬鹿なこと言わんでくださいっ…あんたもう、耄碌したんじゃないのかっ…」
「そうだっ…酔っ払ってるから、木が幽霊に見えたんだろ?」
「ち、違うっ…俺ははっきりと見たんだこの目でっ…!」
「ばかな…あんた、そんなこと言ってると次の選挙、危ないぞ?」
「違うんだっ!俺は見たんだっ!」
「先生方、落ち着いてください…」
慌ててるじいさんたちを尻目に、どんどん火の玉は数を増やしていく。
「お、おい…あの光の玉、増えてないか…?」
「なんだあれは…おい、君、見てこいよ」
「えっ…俺がですかっ!?」
「君はガイドなんだろう!?これも仕事だろうが!」
「でっ、でもっ…!」
「いいから行けっ!」
ドカっと背中を蹴られた若い男は、一瞬鬼の形相でじいさんたちを振り返った。
「な、なんだその顔は…大金を払ってるんだ…このくらいの仕事をしろ」
「…わかりましたよ…」
ガイド役の若い男が離れていくと、じいさんたちはぎゅっと身を寄せ、一塊になった。
ばかだなあ…一番まともに物事を判断してるやつを、自分たちから引き離すなんて…
「おい…なんだあの声…まだ聴こえるぞ…」
風に乗って遠くから、男の泣き声は断続的に聴こえている。
いいぞ…もっと怯えろよ。