第7章 Fuse
ぐにゃりと雅紀の顔が歪んだ。
「…身体に刻まれた記憶って何…?上書きってなに…?」
雅紀は顔を手で覆った。
「ねえ…答えて…」
「ニノ…」
「え?」
「ニノはね…知らないうちに身体を売られてた…」
どくんと心臓が鳴った。
「え…?なんで…?だってニノは人類の希望で…大事にされてたんだろ…?」
「だから!」
雅紀が起き上がって背中を向けた。
「だから抱きたがる変態親父がたくさんいたんだ…!」
ああ…
翔が言ってたニノの最後の言葉は、そういう意味だったんだ。
”強姦”されたのは…ニノだったんだ…
強姦…性行為…男同士…快楽…
ラボから飛び降りる直前にニノが言っていた言葉…
そういう意味だったんだ…
それを知って、ニノは自分を殺したんだ
ニノ…
辛かったね…
ぎゅっと自分の身体を抱きしめた。
ニノ…この身体の中に居る、もうひとりの”俺”…
ニノも俺も…
籠の中の鳥だった。
でもその籠の中は…
汚いもので、溢れかえっていたんだ…
人間の欲望
ヘドロみたいな汚い欲望
そんなところで…俺達は生きてきたんだ…
「雅紀…」
背中が震えてる。
起き上がると、雅紀の背中に縋り付いた。
「雅紀…抱きしめて…?」