第1章 Area B
しばらくすると日が暮れてきて。
雅紀が服をいろいろ持ってきてくれて、風呂に連れて行かれた。
校舎の裏手にある小さな小屋に風呂はあった。
「ドラム缶…」
「あれ?入ったことない?」
「ない…」
ドラム缶の中には水がたっぷり入ってて、下で薪を燃やして湯を温めるようだ。
雅紀が火をおこして、薪に火を入れてくれた。
物珍しくてじっと見てると、ふうふうしていた竹を渡された。
「これで吹いてご覧」
言われたとおり、火に向かってふうううっと強く吹いてみた。
火が真っ赤になって燃え盛った。
「わあ!すごい!」
「ふふ…A地区の人はこんなことあんまりしないからさ、面白いかなと思って」
「面白い!こういうのはやらせてもらったことない!」
「そっか…ニノ…」
「うん?」
雅紀がちょっと切ないような顔をした。
「ニノは…」
「え?」
「ううん…なんでもない」
曖昧に笑って、雅紀は俺から竹を取り上げた。
暫くしたらドラム缶の中の水から湯気が出てきて、お湯になったとわかった。
手を少し入れてみたら、温かい。
「もうそろそろいいかな」
雅紀は丸いすのこを俺に渡した。
「これなに?」
「これ敷いて入らないと、ケツ火傷するぞ」