第6章 YOU
ベルベットは通称。
スエードと同じく、内閣府内閣官房庁に極秘で設置されている部署だ。
つまり、首相の直下にある諜報機関。
存在を知るものは、少ない。
スエードはその反政府的な立ち位置から、世間の認知度は高い。
だが、ベルベットの存在はあらゆる情報操作により、世間には隠蔽されている。
その滑らかな名前に反して、彼らの情収能力は苛烈だ。
「…シュウからの通信も遮断されてる」
「なんだと…?」
「舐めやがって…」
シュウこと修(おさむ)は、このチームで唯一の現場潜入者だ。
もう何年もB地区に潜入して狩りを報告してきている。
そのシュウの通信も遮断されているということは…
今回の狩りの団体は、政府関係者か…!
「すいません…じゃあ、俺、自分のチームに…」
「いや…櫻井、これはうちのチームの案件だ…ちょっと待ってろ」
俺は…B地区を担当するチーム。
アースノールにはその任務の一環で、潜り込んだのだ。
B地区から人が攫われて…人体実験に使われているという情報があったからだ。
B地区のあらゆる情報を、軍部より握っておく必要がある。
反政府的な立場を取るスエードの姿勢を、内閣府は上手く利用して俺達に調査させていた。