第6章 YOU
孤児だった俺は、愛なんか知らなかった。
それを…あいつらは教えてくれたんだ。
だから、守りたい。
ニノと自分の姿が重なる…
俺は熊本の乳児院の前に捨てられていた。
ポストがあるのに、そこにすら入っていなかった。
素性を知られたくなかったんだろう。
死んでもいいと思っていたんだろう。
俺のことが…邪魔だったんだろう。
政府の諜報部には孤児が多い。
調査中に命を落とすこともあるからだ。
命を落としても悲しむものが居ない。
「ニノ…お前のことも…守るから…」
あいつらは、大事なものを根こそぎ奪われてきた人間だ。
だからあいつらが大事にする物、俺が守ってやる。
あいつらの世界…
一人暮らしの家に戻る。
ここは表向きの俺の家だ。
本当の家は、スエードだ。
「あ…?」
電信が来ていた。
今どきモールス信号なんて使うやつが居ないからと、B地区との通信に使っているやつ。
電話に転送できるよう設定してあったのに…
長野博士との面談で電源を落としていたままだったことに今気づいた。
「えっ…」
慌てて上着を掴んで外に出た。
「油断してた…!」
通信は雅紀からだった。
”ニンゲンガリハジマツタ”