第5章 深遠の記憶
夜になって、ドクターはA地区に帰っていった。
じゅんはしょうを送っていくんだって。
部屋にはまさきとさとしが居る。
でも元気がなくて…
ふたりともただ座ってる。
僕は話しかけることもできなくて、ただベッドに寝ていた。
ぐうっとお腹が鳴った。
さとしが顔を上げて僕を見た。
「ごめん、お腹減ってるよな…」
そう言って部屋を出て行った。
「ニノ…一人で居られる?」
「うん…」
まさきは僕の顔をみて、手を差し出した。
「一緒に行こうか。頭痛大丈夫?」
「うん!」
一人になりたくなかったから、まさきの手を取って立ちあがった。
まさきにはわかったのかな?
僕がひとりになりたくないって。
給食室に入ると、さとしがぱたぱたと準備をしている。
「ごめん。智、なにやればいい?」
「あ、じゃあそのもやし洗ってくれる?」
ごはんを作るところを見たことがなかったから、僕はずーっとふたりを眺めてた。
「なに?珍しいの?」
さとしがざるを持ちながらこっちを見た。
「うん。ごはん作るのみたことない」
「おお…そうだよな。じゃあこっちこい」
「いいの…?」
「いいよ。見てなよここで」
そう言ってちょいちょいと手招きした。