第1章 Area B
二重のくりくりとした瞳が、じっと傷を見ている。
抜けるように白い肌に健康的な赤い唇。
ちょっと拗ねたように尖らせた口元が子供のようだ。
ちゃんと手入れされた眉毛は跳ね上がってて、何故かシベリアンハスキーを思い出した。
目にかかる前髪を除けながら、傷をみた翔はにっこり笑って潤を見上げた。
「処置が良かったみたい。大丈夫だよ」
潤は嬉しそうに頷くと、翔にガーゼを手渡した。
「ニノ、傷は綺麗だから大丈夫だよ。化膿しないように、ちゃんとガーゼにこれを擦り込んで貼り付けておくんだよ?」
そう言って何かの薬のチューブを出した。
「はい…ありがとう…」
翔は俺の手を取ると、薬を塗ったガーゼを貼り付けて包帯を巻いてくれた。
「頭に傷はあるの?」
翔はまた潤を見上げた。
「いや…目立った傷はないよ。ヘルメット被ってたし」
「そうか…」
包帯を巻き終わると、俺の頭を引き寄せた。
「ちょっと調べさせてもらうね?」
翔の胸に抱かれるように身体を前に倒された。
いい匂いがする。
あれ…この香水…潤と同じだ。
翔は俺の髪をかき分けながら、頭全体を調べた。
「うん…ないね…ちょっとここが赤くなってるな…」