第1章 無愛想な人
「あ~、これ面白い!キュンキュンするー!」
お風呂上りにベッドの上で足をばたつかせながら
手にある恋愛小説を読む有紀
電車でばったりあった二人が一瞬の出来事で恋におちる
ありきたりな内容だけど
深みがあって好きだなー
そんなことを思っていると有紀の携帯がなる
ディスプレイに
『早乙女 直哉』
と映る
ん?珍しすぎる
なんだろ・・・いやーな予感
直哉とは幼馴染で
現在小説かなんかの出版社に努めてて
最近はめったに連絡もとってなかった
「もしもし、有紀です。」
『久しぶりだね。有紀。あ~よかったよ。有紀でてくれた。でてくれなかったらどうしようって・・・。』
「わ、わたしに何かよう?なんか嫌な予感しかしないんだけどさ」
『うん、ちょっと一生のお願いがあって』
「一生のお願いは何度もつかえないのよ?」
『ちょっと有紀意地悪だよ。そんなことはどうでもいいんだ。ちょっと手伝ってほしいことがあるんだ』
「う~ん、内容による!」
『さすが有紀!そうこなくっちゃね
有紀の家、AI’Sマンションちかいよね?』
「あ、目の前だよ!」
『あの家にね、俺の担当作家がいるんだけど、原稿締切がほんとにやばくって、俺も今手がはなせなくって、他のやつも死んでて・・・もう有紀しかいないっていうか。内密にできて、頼れるやつっていうのが有紀しか・・・どうか!』
「じゃ、私がその作家から原稿をうけとって、
その原稿を「私が」直哉の会社に届ければいいのね!この私が!」
嫌味っぽくいう有紀
『ほんとうにごめん。この埋め合わせは絶対するし、俺の会社まで届けるのも大変だけど、そこもおねがいしたいんだ。こんなこと、たのむことは絶対なかったんだけどさ。』
なんだかんだいって、長い付き合いの有紀と直哉。
「ごめんね、こんな言い方して!私でよければ行くよ!それでどこ?・・・うん、うん。わかった。じゃ、いそいでもらってくるね、また連絡する!」