第7章 貴方の一番になりたい
「な!そんなふうに思っていたのか?!」
あぁもう、泣きたいよ。
「そうだよ!私だって私だってね、本当は、できんなら逸物つけて性別変えて、松代さんの腹から皆と一緒に生まれたかったよ!」
居心地いい松野家、みんなの事は好き。
おそ松はおいといてチョロ松も一松も十四松もトド松も、みんなみんな大好き。
でも一番好きなのは、カラ松なの。
自分の事よりも人の事で怒れるカラ松が好きなの。
「な、ガールがい、いい、逸物なんていうもんじゃな...」
「うっさい!黙れ馬鹿童貞!どうせない胸なんだから、いっそ男になりたいわ!それで!それで...!」
だってそうしたら、カラ松と無条件で一緒にいられるんだから。
男は、兄弟は、いいよね?
友達としていられるでしょ?仲間としていられるでしょ?
恋人なんてなれないなら、せめて友達でもいたいもんでしょう?
「俺はお前の事を1度だって男なんて思ったことないぞ!」
「なんでそんなに話がズレんのよ!馬鹿!だからあんたは童貞なのよ!」
そんな事を言いたいんじゃなくて、ただ一緒にいたいと言いたいのに歳の数だけ素直さは減る。
「大事な事だ!俺はお前が好きなんだから!」
....はぁ?
目を見開いて見れば、そこには頬を赤く染めて真剣な顔するイタい人。
「...透?」
さらっと髪を撫でられて、そこにそっとキスされて、いったいさっきまでの言い合いはなんだったのか?
自分の時間だけ止まってるみたい。
じっと見つめるとカラ松のマリン系の匂いがフワリ近付いてくる。
あっ、これキスされる...。
高鳴る心臓、どうか夢なら覚め...
「たっだいまー!みてみて!パチンコ勝っちゃったぁ!さすがカリレジェだよなぁ!」
スターンと勢いよくなる襖、勢いあまって私の真横に倒れ込むカラ松。
「おおおあああっ!おかえり!おそ松!今ちょっとゴミを取ろうとしてたんだ!」
せっかくのいい雰囲気を...。
「あり?そだったの?お兄ちゃんてっきりキスしようとしてるよう...って、ちょっ、透ちゃん?」
「死にさらせ!クソ童貞がぁぁ!!」
「透やめろ!おそ松、おそ松が死ぬ!」
やっぱり私、おそ松を兄さんと呼べそうにないわ。
ーブラザーも大切だけど...たまにはー