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【おそ松さん】貴女と愉快な六つ子たち

第6章 私は食虫植物になりたい



ローズマリー、赤ワイン、ローリエ、色々なスパイスの匂いがあたりに広がった。

「うん、こんなものかな?」

火を弱火にしながらじっくりじっくりと煮込み続けるお肉は、色んなスパイスのおかげで臭みがなくなった。

「うひょー!トド松!なにこの匂い!おにーちゃんにもちょーだい!」

「いーにおい!いーにおい!」

おそ松兄さんと十四松兄さんが匂いにつられて、キッチンへと入ってきた。

「ビーフシチュー作ってるの」

にこっと笑って、また鍋を見つめる。
綺麗に煮込まれたお肉、何時間も灰汁を取り続けたそれは綺麗なスープのそこでくつくつと嬉しそうに踊ってる。

「ビーフシチューっ?!なにそれなにそれ?トッティー!」

後ろで十四松兄さんがはしゃぎだす。

「あれだよ?おっしゃれな料理!」

「おっしゃれ?おっしゃれっすか?」

料理の説明をするおそ松兄さん、それに首をかしげて
長い袖を口にあてる十四松兄さん、いつもと変わらない風景だ。

コトコトと鍋の中身を煮る音がやけに遠くできこえる程、平和な風景。


「ねぇ、できたら俺にもくわ...」

「ダメ」

「えー?僕には僕には?」

「ダメだよ、十四松兄さん?」


食べさせてと言わんとするおそ松兄さんと十四松兄さんに僕は、はっきり一言でダメと断る。
あげれるわけないんだ。
だってこれは、透ちゃんとの思い出の味なんだから...。

ふっと透ちゃんとの思い出に浸る。
僕の作った料理をいつも美味しそうに食べてくれていたっけ...。

そうこうしてたらさ、十四松兄さんたら鍋のスープをひとすくい小皿にうつして飲もうとしたんだ。

「....トッティ」

近くまできて匂いを嗅いだ十四松兄さんは、何故だかさあっと顔色をかえる。

「なぁに?十四松兄さん?」

「....これ、なんの...」

言い終わる前に、何故だか十四松兄さんはサッと口を閉じてとってもとっても寂しそうな顔をした。

「...トド松、お前、なんで泣いてんの?」

心配そうに覗き込むおそ松兄さん。
いつもはそんな顔しないくせに、どうして、違うんだ。

ちがうんだよ。

「いや、幸せ...だな...って...」
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