第6章 私は食虫植物になりたい
言葉を失う私の耳元で彼は優しく囁く。
「ねぇ?責任とってくれるよね?」
囁かれた言葉が脳に直接響いて身体を巡って、もう息が苦しい。
壊れそうなほど速い心臓の音が湧き上がる期待と熱を急かし、身体を震わせる。
「こら、そんなに強くしちゃダーメ」
知らぬ間に手に力が入っていたのか、私は彼のそこを強く握ってしまっていたようだ。
「ごめんなさ...」
「あーあ、お仕置き決定だね?透ちゃん?」
黒真珠の光が濃くなっていく。
完全にスイッチをいれてしまった。
「ほら、そこ手をついて?」
綺麗に磨かれていた調理台の上を指差して彼はにっこりと笑う。頬を紅潮させて楽しそうに...。
「ほら?はやく」
甘い息を吐きながら、彼はその場所へと私をほだす。
言われた通りに調理台に手をつけば、ひんやりと伝わる冷たさに身震いした。
ピリッと小さな袋を裂く音が背中からきこえてびくびくと足が震えだす。
いったいいつの間に忍び込ませていたんだろうなんて、野暮な事を考えている場合ではない。
はやく欲しいのだ。
熱いそれが...。
熱を期待すればする程にびくびくと震えだす足、それに連動して膨らむ期待。
「あーあ、足震えてるよ?かーわいい」
いつもより少し低めの声とともに、耳元でくちゅりとやらしい水音が響く。
「あっ、やぁっ耳は、やめ、ひんっ!」
「あれ?なんて言ってるかわかんないや?でもその声、もっとしてって事でしょ?」
ちゅうっと耳たぶを吸われ、高い声をあげればふうっと熱い吐息が耳をくすぐる。
「...僕が、欲しい?」
甘い言葉にトロトロと脳が溶けてしまいそうだ。
言葉を選ぶ暇もなく、私は乱れた息を整える事も忘れてねだる。
「うん、欲しい、欲しいよぉ」
顔を自分の腕の中へと沈ませ、羞恥を忘れてそう言った。
ひんやりと冷たい調理台さえ、私の熱を冷ますことはできない。
「ふーん?じゃあ?脱いで?」
可愛らしい声なのに、有無を言わさない言葉に私はルームウェアを脱ぎ捨てた。