第6章 私は食虫植物になりたい
彼の頬の柔らかい感触に浸っていれば、突然生暖かいなにかが私の指に絡みつく。
くちゅっといやらしい音、私の人差し指がゆっくりと彼の口内に飲み込まれていく。
はあっと甘い息を吐いて、熱のこもった視線が私をさす。その甘さにあてられて指に、身体に、子宮に血が駆け巡る速さが増す。
ドクドクと鳴り響く心臓、身体の中でさえも彼の手の中...。
赤い舌が人差し指に絡みついて、付け根から指先を味わう。
「あっ...まって...」
その一言に放された人差し指は、唾液まみれのまま秋風にふかれ冷えてゆく。
冷たくなってゆく指が私に寂しさを連れてくる。
「...うそ」
小さく二文字がきこえてハッとすれば、彼の舌はすでに私の口内の中だ。
手を握られ指を絡められ、全てが彼に触れる。
絡まるその一瞬の隙間さえ、私には耐えられない。
私は夢中で彼の指に指を絡ませ隙間を失くす。
喉の乾きを我慢できる?
答えはノーだ。
空腹を我慢できる?
答えはノーだ。
欲しいのだ。
もうどうしようもなく...。
はぁはぁと二人の息が混ざる。
見つめているのは私か彼か、わからなくなるほど貪る。
絡んだ指に力をこめて、一瞬でも離れる事を許さないとでもいうように絡め続ける。
やっと離れた唇からとろりとつたう細い糸。
二人からもれだしたそれは、真ん中へいくたび丸くなりやがて重さに耐えきれず千切れてしまう。
「透ちゃん」
ゆっくりと離された指は力をこめすぎたせいか、だらんと下を向く。
しかしそれを許す前に彼は私の手を取って、2人だけの秘密の場所へと導いてからうっすらと笑う。
「あっ....」
言葉を失うほど、彼のそこは硬く太くラフな格好の薄い布では隠しきれない熱を帯びていた。